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●ラブストーリー春香伝 (2009.8.10) 

(3)春香と夢龍の出会い

 燕が三春に飛んで来て飛び去るやいなや、李道令は気が塞いで寂しく頭がくらくらして、変な考えが浮かんで来るのです。ひとり言をぶつぶつとつぶやいて、
「五湖(中国太湖近くの五つの湖水)で小舟に乗って、范小伯(プムソベク:呉の国を滅し西施(ソシ)湖に消えた人)を追ったので西施も来るはずがなく、垓城(ヘソン)の月夜に悲しい歌で覇王と別れた虞美人も来るはずはなく、丹鳳闕(たんほうけつ)を暇乞いし、白龍堆に行った後で独留青塚したので、王昭君もいるはずはなく、長信宮に深く駆け込んで白頭吟を詠じたから、パンチョビョもいるはずはなく、昭陽宮に朝方かしづこうと回って来たから、趙飛燕(チョビヨン)も来るはずがない。洛浦(ナッポ)の仙女だというのか、巫山(ムサン)の仙女だというのか」

 道令様は魂が中空に飛んでしまって体が疲れてだるく感じました。それはまことに未婚の人のようでした。

「通引!」
「ははっ!」
「向こうの花と柳の中で、行ったり来たり白くちらほらと素早く動いているものは何なのか詳しく見て来い」

通引が見て来て話すには、
「ほかでもありません。この府の妓生だった月梅という人の娘、春香という女の子でございます。」

道令様が思わず言うには、
「いいぞ! 素晴らしい!」
通引が言うには、
「自分のおふくろが妓生でも、春香は気位が高く妓生になることを拒み、百花草葉で文字も覚えて、巧みな才能で文章をさまざまに完全に備え、普通の家の娘と変わったところがございません」

 道令は、はっはっと笑って房子を呼んで言いつけることは、
「聞いたとおり妓生の娘だそうだから急いで行って呼んで来い」

 房子が答えて言うには、
「白雪のような肌に花のような顔が南方では有名ですから、方僉使(バンチョンサ:観察使の別名、道の長)、兵府使、郡守、県監、官長(地方官)様達、たいした両班の浮気者達も大勢見たがり、荘姜(周文王の母)の美点と妊似の徳行、李杜(李太白と杜甫)の文筆、太似の和順な心と二妃の貞節を身に着けたので、今天下の時代で、万古淑徳の誉れ高い女性です。それゆえに恐れ多いお言葉ですが、やたらに扱うことは難しいかと思われます」

 道令は大笑して、
「房子よ、お前は物というものにはそれぞれ主人があることを知らないのか? 荊山(中国の金産地)の白玉と麗水(中国の金産地の黄金)には持ち主がそれぞれあるのだから、無駄口は止めて呼んで来い」            

 

 

 房子が言いつけを聞いて、春香を招きに行くとき、めかし込んだ房子は、西王母(中国古代の仙女)がはす池の宴の席に手紙を伝えた青い鳥のように、あちこち渡って行って、

「これこれ、春香!」
と呼んだがその声に春香はびっくりして驚き、
「何をそんなに大きな声を張り上げて人をびっくりさせるのでしょう!」
「こいつ、黙れ。用があるのだ」
「用とは、どんな用でしょう?」
「使道の令息である道令様が広寒楼に来られてお前が遊んでいるのを見て呼んで来い,という命令なのだ」

 春香が腹を立てて、
「お前は気違いだね。道令様がどうして私を知って、呼んでいるというの? こいつ、お前が私のことをいい加減にいいふらしたのでしょう」

「いや、私がお前のことを言う筈がないから、お前が間違っていて、私は間違ってないぞ。お前が間違ったわけを聞いてくれ。女の子がたしなみでぶらんこをするのだったら、お前の家の、後ろにある庭の塀の中でぶらんこの紐を結び、他人が知らぬ間に、こっそりとぶらんこをするのが当然普通なはずだ。広寒楼が遠くなく、またこの場所を言えば、緑陰のよい香りの中で草花は搖らぎ、柳が草緑色の幕をたらし、後ろの川の柳は柳緑色の幕をたらし、一本の枝は、伸びもう一本の枝は横に廣がり、狂風に負けずにふらふらと踊っているが、広寒楼の物見場から見えるのは、ぶらんこを結んでお前がこぎ、瓜の種のような二本の足で白雲の間に遊ぶとき、紅糸のすそがひらひら、白紡糸の肌着まで東南風にひらひらとし、夕顔の白い宝のようなお前の肌が白雲の間にひらひらしているのを道令様が御覧になってお前を呼べというのに、私がどんなことを言ったというんだ。無駄口を叩かないであっちへ行こう」

春香が答えて、
「お前の話は当然かもしれないけれど、今日は端午の日。外でぶらんこに乗ることがいけないことではないはず。外の家の娘達もここで一緒にぶらんこをしたのだし、それだけでなく、たとえ私の話をしたとしても、私がいま芸者としているわけでもないから、素人娘をやたらに呼ぶ理屈もないし、呼んだとしても行く理由もないわ。はじめからお前が話を聞き違えたようだね」

 房子は言い負かされて広寒楼に再び戻って来て道令様に報告しました。、道令様はその話を聞いて、
「しっかりした人だ。それは道理の通った話だ。もう一度行って話をするときに、このようにしろ」

 

 

 房子は、伝言をまとめて春香の所に行ってみると、その間に彼女は自分の家に帰っていました。彼女の家を訪ねてみると、母と娘が向き合って座り、昼食の最中でした。

房子が入って行くと、
「お前、どうしてまた来たの?」
「恐れ入ったな。道令様がもう一度ことづてをなさったのだ。‘私はお前を妓生とは思っていない。聞く所によるとお前が文章をよく書くという教養に溢れていることで招くのだ。普通の家の娘を呼び出すことは聞こえが悪いといえば悪いのだとは思うが、間違いだと言わずにちょっと来てくれ’とおっしゃっているのだ」

 春香の広い心は縁でもあったのか、きっぱりと行く気持ちになったのです。けれども母親の気持が分からないので黙って暫くのあいだ言葉なく座っていたのですが、春香の母がさっと進み出て無我夢中で言いました。

「夢というのはまるっきり嘘ではないようです。昨夜夢を見たのですが、いきなり青い龍が一匹碧桃池(ピョクドモッ)に浸っているのが見えたのでどんなよいことがあるのだろうかと思っていたところでした。偶然のことではなかったのです。また聞けば使道の令息道令様の名前は夢龍(モンリョン)と呼ばれるそうだが、夢の字と龍の字が霊的に合わさったのですね。とにかく両班が呼んでおられるのに行かずにおれましょうか。ちょっと行っておいで」

 春香がようやくしょうがない振りをしてやおら立ち上がって広寒楼に行きました。大名殿の大梁で雨燕が歩くように、楊氏の庭でめんどりが歩くように、白い砂原で金色の泥亀が歩くように、月態花容(ウォルテファヨン)の美しい身のこなしをしていました。蓮歩(ヨンボ:美人の歩み)で歩いて行く時、しずしずと越の国の西施の土城習歩のように歩いて来る時、道令様は高い欄干に半分隠れて立ち、首を伸ばしたり曲げたりして待ち構えていると、春香が歩いて広寒楼へ近付いて来るのです。道令様は喜んでよく見れば、妖艶かつ貞淑とした月態花容の美しい身のこなしは世の中で比べるものなく、顔は清楚で、清江で遊ぶ鶴は雪月に照らされたようでした。赤い唇と白い歯は少しだけ開かれ、星のようでも宝石のようにも見えるのです。紅をつけたような上から下まできれいな身なりは、漂う霧に夕陽が映えるようでした。青いチマのまだら模様は天の川の波のようでした。蓮歩で静かに進み、ゆっくりと楼閣に上り、恥ずかしそうに立っていると、通引を呼んで、

「座るように申せ」と言いつけました。

 春香が、美しい身のこなしと顔で端正に座った様子をよく見ると白石の海辺に青い波が打つ美しい景色のようで、新たに降った雨の後で水浴びして座った燕が人間を見て驚くような、とくにめかした風でもなく、さり気ない国色(絶世の美人)なのです。玉のような顔と向き合えば雲の間の名月のようで、赤い唇を半ば開けば,さながら水中の蓮の花のようでした。神仙を私は知らないが、瀛州(ヨンジュ)で遊んでいた仙女が南原へ流刑にされて来て住んでいるのだろうか、月宮に集まって遊んでいた仙女は友達の一人をなくしたにちがいないなぁ。お前の顔、お前の身振りはこの世の人ではないようだ。

 

 この時、春香はちらりと李道令の方を見て観察してみると、天下の豪傑でこの世の才と智慧が人並みはずれてすぐれた男のようでした。額が広かったので少年から手柄をたてるであろうし、額と顎と鼻と左右の顔面が調和しているので、国に報い、忠臣となるだろうと、心で敬い、目を伏せ、膝を揃えて端正に座っていました。

 李道令が口を開き,
「聖なる賢人たちも、姓が同じであれば結婚することが出来ないと言った。お前の姓は何といい、年は幾つか?」
「姓は成氏と申し、年は十六でございます」

李道令はこれを聞くと、
「はっはっ,それは嬉しいな。お前の年を聞くと私と同い年だ。十六歳で成氏と聞けば私とは天が定めた縁であることは明らかだ。李成之合として、よい縁を一生涯共に楽しむことにしよう。お前の父母はどちらも御存命であるか?」
「片親の母と一緒におります」
「何人兄弟なのだ?」
「十六歳のこの年まで母親には息子がなく私が一人娘です」
「お前もよその家の大事な娘なのだなあ。天の定められた縁として、私達二人が出会ったのだから一生涯の幸せを遂げてみよう」

 春香の動きを見ると眉をひそめ赤い唇を半ば開け、細い喉をやっと開いて玉のような声で話すのでした。
「忠臣は二人の君子(主人)に仕えず、烈女(貞女)は二人の夫を取り替えずといいますが、道令様は貴公子で私は賎しい女ですので一度情をお任せした後で私をお捨てになれば、一片丹心(一途の心)となったこの私の心を獨守空房(夫を失ってひとりになること)として一人で寝ては泣くこの私の身の恨みを私でなければ誰が分かるのでしょう。そのような仰せは二度となさらないで下さい」

李道令が言うには、
「お前の話を聞くとまことにしっかりした人だと思う。私達が縁を結ぶときは金石盟約(鉄や石のように固くて変らない約束)を結ぶことにしょう。お前の家はどこか?」

春香が申し上げるには、
「房子を呼んでお尋ね下さい」

李道令は、はっはっと笑って、
「私がお前に尋ねる言葉は荒唐無稽のようだな。房子!」
「はいっ!」
「春香の家をお前が言え」

房子は手をそれとなく上げて指差し、
「あそこ、あの向こうの裏の小山はうっそうとしていて、蓮の池は清らかで育てた魚が水で遊びまわり、その間には仙人界の草花が爛漫と生い茂っていて、木に止まった鳥は派手な姿を自慢し、岩の上の曲がった松は、清風がさっと吹きつけると老いた龍がのたくるように見え、家の前には高麗柳があり、有糸無糸のような楊柳の枝、それと黒豆の木、側柏(このてがしわ)、樅(もみ)の木があり、その間の公孫樹(いちょう)は陰陽に従って向かい合って立ち、草堂の門前に梧桐(あおぎり)、棗(なつめ)の木、深い山中に木犀(もくせい)、トポ、猿梨の木、あけびが幾重にもぐるぐると取り巻いて塀の外ににょっきりそびえており、松と竹林の間にかすかに見えるのが春香の家でございます」

道令様が言うには、
「庭の垣根は瀟洒(しょうしゃ:おしゃれ)で、松や竹がうっそうとしており女子の節度と気概、たしなみを正に知るに値する」

春香が立ち上がり恥ずかしそうに言うには、
「最近では人々の心も物騷なので遊ぶのはこの位にして帰らせて頂きます」

道令様はその言葉を聞いて、
「しっかりしているな。もっともなことだな。今夜、退勤後にお前の家に行くつもりだから、どうか冷たくしないでくれ」

春香が答えて、
「私は知りません」
「お前が知らないと話にならない。さようなら。今夜会おう」

 

 楼閣から下りて帰って来ると春香の母が迎えに出て来ており、
「あら、うちの娘がもう帰って来たのかね。それで道令様は何とおっしゃったのかい?」
「何もおっしゃらなかったわ。少しだけ座って、帰ろうと立ち上がったら、今夜、家に行くとおっしゃったわ」
「それで何と答えたのかい?」
「知らないと言ったわ」
「よく言った」

(つづく)

 

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