大光寺
 
占い・お祓い・鑑定について
大光寺 金先生について
お祈り 儀式の日
大光寺 幸せになる道
大光寺の光
大光寺の歴史
体験談
大光寺特別ページ 霊感の道
ギャラリー
kekkon
記事・メディア
修行
神秘な世界 現れた魂たち
悟りの船 八萬大蔵経
神妙章句
得度式
ブログ
アクセス
リンク
 

 

●ラブストーリー春香伝 (2009.8.11) 

(4)おさまらない片想い

 この時、道令様は春香を悲しい気持ちで送った後で忘れることの出来ない想いを拭い去ることが出来ず、書物の部屋から帰って来ても何に関してもやる気がなく、ただ考えるのは春香のことだけでした。話す声は耳にいんいんと残り、美しい身振りが目に鮮やかに浮かび、日が暮れることだけを待っていたのです。房子を呼んで、

「太陽は何時をさしているのか?」

「東の方にいま芽が出ております」

道令様は大いに腹を立て、
「こやつ、けしからん奴だ! 西に沈む太陽が東に後戻りするものか。もう一度よく見ろ」

間もなく房子が申し上げるに、
「太陽は落ちて咸池(ハムヂ:太陽が水浴する所)で黄昏(たそがれ)となり、月が東の嶺に湧き出してまいりました」

夕飯は味がなく、悩みのために寝ることもできませんでした。
「退令(終業の合図)を待とう」

といって書物を見ようと机を前にして中庸(ちゅうよう:戦国時代の思想書)、大学、論語、孟子(もうし)、書伝、周易(しゅうえき:易経のこと)に古文真宝(こぶんしんぽう)、通史略と李白、杜詩、千字文(せんじもん:子供に漢字を教えるために用いられた漢文の長い詩)まで出して置き、先ずは詩伝から読み始めました。

「關關雎鳩(かんかんしゅきょう)は在河之州にして、窈窕淑女(ようちょうしゅくじょ)は君子好逑(くんしこうきゅう)なり」
「互いに声を交わして鳴く情景は鳥が河辺で遊び歩いているのだ。美しい女性は君子のよき配偶者だ。駄目だ。この文も読めない」

大学を読むも、
「大学の道は、明々たる徳にあり、新民にあり、春香にもあるんだ。この文も読めない」

周易を読むが、
「元は亨、コ(鼻と同音)は貞、春香の鼻は顔にすっきりとおさまり美しい鼻をしていたなぁ。この本も読めない」

「滕王閣(とうおうかく)だと。南昌(なんしょう)は古都で紅都は新府だと。よし、この本は読めた」

孟子を読む時、
「孟子は梁惠王(りゅうけいおう)とお会いになって王が言うには‘叟(おきな)は千里を遠しとせず来たる’と言われたが、春香を迎えに来られるのだろうか?」

史略を読むと、
「太古の天皇も、スクトク(よもぎの餠)によって王となり、歳起摂提(さいきせってい:暦を定めること)を行って無為而化(むいじか)したといい、兄弟十一人がそれぞれ一万八千歳を享受した」

房子も申し上げるに、
「天皇が木徳(モクトク)で王になったという話は聞いたことがありますが、よもぎ餠(スクトク)の王という話は今初めて聞きました」

「こ奴め、お前は知らんのだ。天皇は一万八千歳を生きた両班で歯が強く、木徳(モクトク)を召し上ったが、その時代の先輩達は木の餅(モクトク)が食べられるか? 孔子様は、後のことを思って明倫堂(めいりんどう)の夢に現れ‘その時代先輩達は歯が弱くて木の餅を食べられないのでふんわりしたよもぎ餅にせよ’といって三百六十州の郷校(きょうこう:国立教育機関)に通文してよもぎ餅に直したんだ」

房子がこれを聞いて話すには、
「ほぉ、神様がお聞きになればびっくり仰天される話を聞くものです」

また、赤壁賦(せきへきのふ)も取り出して、
「壬戌(みずのえいぬ)の秋七月幾望(きぼう:陰暦十四日の夜)に、蘇氏(そし)が客と共に舟を浮かべて赤壁の下で遊ぶ時、清風がゆっくりと吹き波が立たない。駄目だ。この文も読めない

 

千字文を読むとき、
「そら……天、つち……地」

房子が聞いていて、
「あのぉ道令様、尊いお方が千字文とはどういうわけですか?」
「千字文という文は七書(四書三経)の本文だ。梁(りょう)の国の周捨奉(チュサボン)、周興嗣(チュフンサ)が一晩でこの文を作って頭が白くなったので本の名前を白首文ともいうのだ。一つ一つ解釈してみると、物の核心となること(中心の糞を排泄するともとれる)が多いのだ」
「私でも、千字文の大切な箇所は知っております」
「お前が知っているというのか?」
「知っておりますとも」
「知っているのなら、読んでみろ」

「はい、聞いていて下さい。高い高い空……天、深い深い土……地、くるくるぐるぐる目が回って……玄、燃えて黄ばんだ……黄」

「えーい、こいつ。常民(下層の者)は実際的だ。こいつ、どこかで場打令(チャンタリョン:物乞いするとき門前や市場などで歌う俗っぽい歌)というやつの言葉を聞いたな。私が読むから聞いてみろ。空が子(ね)の刻に開き、空に勝る広大な……天。地面が丑三つ時に開闢(かいびゃく)すると五行(ごぎょう)と八卦(はっけ)で……地。三十三天、空(くう)はまた空(くう)であるという人心を指し示す……玄。二十八宿、金木水火土の正色(間色でない純正の色)の……黄。宇宙日月重華にして玉宇諍偬(オグチェンヨン:天帝が住むところの険しい模様)の……宇。年代国都興盛衰、昔は去り今は来る……宙。禹治洪水(うじこうずい)、飢えた者は醜(しゅう)に,洪範九疇(こうはんきゅうちゅう)の……洪。三皇五帝崩御の後、乱臣賊子(らんしんぞくし)が……荒。東方が正に鶏鳴となり杲杲(こうこう)天辺日輪紅がぴかっと湧き出る……日。万民撃壌歌、康衢煙月(カングヨノル:天下泰平の世の中)の……月。寒心微月(ハンシムミウォル)、時々大きくなり三五日夜に……盈(えい)。世の中万事考えてみるに月の光のようではないか、十五夜の明るい月が既望(きぼう:陰暦十六日の夜)から……昃(そく)。二十八宿から河図洛書(かとらくしょ)を除いた法、日月星辰(じつげつせいしん)の……辰。可憐今夜宿娼家(カリョンクミャスクチャンガ:せつなくても今夜には芸者の家で寝る)という鴛鴦衾枕(おしのふすま:おしどりの寝具)の……宿。絶世の美人、絶好の風流、羅列春秋(られつしゅんじゅう)の……列。依依月色(いいげっしょく:ぼんやりとしてかすかな月光)、夜三更(ヤサムギョン:ひと晩を五つに等分した三番目の夜のこと)の万端情懐(すべてを心の中に思うこと)の……張。今日は冷たい風がさらさらと吹いて寝室に入りこむ……寒。枕が高ければ私の腕を枕にしようと、こちらに近く来い……来。えい、ままよと、しっかり抱いて懐に入れると、雪が降る寒い風にも……暑。寝室が暑ければ、陰風にあたろうとあちこちに……往。不寒不熱(寒くもなく、暑くもないこと)でいつともなく梧桐(あおぎり)の葉が落ちる……秋。白髪が今から生えるので立ち小便の習慣にけりをつける……収。落木寒風(木が落ちる冬の寒い風)、冷たい風、白雲江山(白い雲が山や川を覆っていること)の……蔵。芙蓉が昨夜降った雨に光潤有態(つやが体に流れる状態)の……潤。このようなきれいな身なりは一生見ても……余。百年の約束、深い誓い、萬頃蒼波(果てしなく広々とした青海原)を……成。あちこち遊ぶ時に不知歳月(歳月の流れが分からなくなること)の……歳。糟糠之妻(そうこうのつま)、遊んでばかりいる者でも妻の冷遇は出来ないから、大典通編法中(経国大典と続大典及びその後に王様が下した教命と現行法をまとめた本)の……律。君子好逑(君子のよき連れ合い)ではないのか。春香の口に私の口をあてて、ちゅっちゅっと吸うから法中の「呂」の字がこれではないか。あぁ、ああ、会いたいな〜」

そのように大声を張り上げるので、この時使道(サト:道令の父)は夕方の食事を召し上がって食困症(食後に気だるくなって眠気がする症状)になり木製の寝台で横になられている途中で、

「ぁあ、あぁ、会いたいな〜」
と、聞こえてきたので、その声にびっくりして、

「ちょっと来てくれ」
(通引(トンイン))「はいつ!」

「書物の部屋で誰か針でも刺さったのか? 痛い脚を揉んでいるのか? 聞いて来い」  

通引は道令様の所に人をやって、
「道令様は、どんなに太い喉をお持ちなのでしょうか?大声に使道様が驚かれて、ちゃんと聞いて来いとおっしゃいますが、どうされますか?」

「気の毒だなぁ。普通ならば、よその年寄りは耳聾(ろう)症もあるのだろうが、あまりに耳聡(ざと)いのもどうかと思う」
道令様は大いに驚き、

「こういう風に申し上げろ。私が論語という文を読んでいて‘悲しいことだ、我が道(どう)は長くなったなぁ、夢で主公にお目に掛かることが出来なくなってから’と述べられいる。私もこの肝心な所を読んで、主公にお目に掛かれば、同じ様な気持ちになるだろうと感心して声が大きくなったのですと、お前、そのように申し上げろ」  

通引が入って行ってその通り申し上げると、使道は道令様に負けん気があることを大いに喜んで、

「ちょっと来てくれ。書物の部屋に行って睦郎庁(モクナンチョン:姓が睦(モク)という郎庁(ナンチョン)。郎庁とは郷官(ヒャングァン)として朝鮮王朝時代に六品管の堂下という位の宮人のこと)を黙ってお連れしろ」

郎庁が入って来たがこの両班はどんなに下品に生まれついたのか、軽率な足取りで無遠慮にずかずかと入って来たのでした。

「使道、毎日退屈ではありませんか?」

「あぁ いや別に。ちょっと用があるんだ。我々お互いに古くからの友達で同門の修業をしたけれど、子供の頃文を読むほど嫌いなものはなかったが、うちの子供の詩への関心を見てみると、どうしてどうして将来が楽しみだ」

この両班は知ってか知らずか、とにかく返事をしたのでした。
「子供の頃、文を読むほど嫌いなものは、ありませんでしたよ」
「読むことが嫌いだと眠くなるし、悪知恵も増えるものだ。この子は文を読み始めると昼夜がわからなくなるくらい熱中するという話だ」
「はあ、そうでございましょう」

「教わらなくても、筆の才能が大変多くあるのだ」
「そうでしょう」

「点を一つだけ,ちょんと打っても高峰投石(立派な筆法)のようで、ひとつ‘一’を引いても千里陳雲(千里に雲がむくむくとのぼって陣の模様を成すこと)であろうし、「宀」は雀頭添(画の格好が雀の頭に似ていること)で、筆法を論ずれば風浪雷電(風浪がたち起こり、雷電がなるべく、縦に線を引く画は老松倒掛絶壁(老いた松が絶壁に逆になってぶら下げられている)ようなのだ。槍戈(チャングア:漢字部首の一つ.‘成’,‘戦’ なんかに使われた ‘戈’を言う.)で言うならば正に藤のつるのように伸びている。トリケ(殻を取るために稲を叩く棒)を振り上げて叩く時があるのだが、それは怒って手を槍の穂のように振り上げるのでした。元気がなければ足でこつんと蹴り上げたとしても一画のようになってしまう」
「字を黙って見ていると、画は画どおりになっているように思えて来ます」

「ならば聞いてくれ。私の子供が九歳の時、ソウルの家の庭に古い梅があったので、梅の木を題にして文を作れと言ったら、しばらく作ったが、真心こめたことと必要なことだけを簡潔に取りまとめる腕前は大したもので、一度見たことは即座に記憶したもので、政府の堂々たる名士になる器なのだが、目を南に向けながら北を振り返り、春秋の一首を詠んだのだ」

「将来、丞相(じょうしょう)におなりでしょう」  
使道は大いに感激して、
「丞相はどうにか望めないかもしれないが、私の生きている間に科挙への及第は易しいことなのだから、及第さえすれば六品の官位に上がることは間違いないだろう」
「いいえ、そんなお話ではなく丞相がだめなら長丞(ちょうじょう:木で作った里程標(りていひょう)とでも言って下さい」
使道は大声で怒鳴りつけて、
「君、誰の話か分かっていてそんな答え方をするのか」
「答えはしましたが、誰の話かは知りませんよ」
こんな話をしましたがこれまたとぼけた話なのでした。

(つづく)

 

次は 「ラブストーリー春香伝(3)」

< 前のページへ

 

 

次は 「ラブストーリー春香伝(5)」

次のページへ >


 
ページの一番上へ
Copyright © Daikouji. All Rights Reserved.
大光寺