大光寺
 
占い・お祓い・鑑定について
大光寺 金先生について
お祈り 儀式の日
大光寺 幸せになる道
大光寺の光
大光寺の歴史
体験談
大光寺特別ページ 霊感の道
ギャラリー
kekkon
記事・メディア
修行
神秘な世界 現れた魂たち
悟りの船 八萬大蔵経
神妙章句
得度式
ブログ
アクセス
リンク
 

 

●ラブストーリー春香伝 (2009.8.12) 

(5)はじめての外泊でそわそわするドリョン


 この時、李道令(イ・ドリョン)は退令(終業の合図)が出されるのを待っていました。

「房子(パンジャ)!」
「はいっ!」
「退令が出たか、様子を見ろ」
「まだ、出ていません」

すぐに、また、
「召使を呼べ」
退令の声が長く響くと、
「よし、よし! いいぞ、いいぞ! 房子! ちょうちんに火をともせ」

 通引(トンイン)が一人後ろについて従い、春香の家のあたりに着きました。気付かれないように、そっと歩きながら、
「房子! 上房(サンバン:男主人の居間)に明かりがついているぞ。灯篭(とうろう)の横に隠れろ」
 と言いながら三門の外にさっと出ると、狭い道を月の光がきらきらと照らし、花の間にある青い柳の枝を何度も折って闘う遊びをする男の子達が、夜の青楼(せいろう:美女の住む家)に入って行きました。とっととどこかへ行ってくれと思いながら到着しましたが、美しいこの夜は死んだように静かで佳期物色(恋人に会う美しい時期)ではなかったでしょうか。とは、大げさだな。漁師は桃源郷への道を知らなかっただろうか、私は知っているのに。

 春香の門前に到着すれば、人気はまれで月色は三更(さんこう:子(ね)の刻)でした。桃源では跳ね上がる魚が出沒し、平鉢のような金魚は主(ぬし)を見て喜ぶように、月下の鶴もみこしに乗って相手を呼んでいるようです。この時、春香は七絃琴(しちげんきん)を斜めに抱いて、南風詩(天下がよく治められて民がよく暮らすこと願った歌)を戯れに吟じてから、寝床でうとうとしていたところ、房子が門の中に入って来て、犬が吠えないかと心配し、気付かれぬよう静かに静かに春香の部屋の窓の下にこっそり近付いて、

「春香よ! 眠ったのかい?」 とたずねました。

 春香がびっくりして、
「お前、どうして来たの?」
「道令様が来られましたよ」  

 春香はこの言葉を聞いて胸がどきどき重苦しく恥ずかしさに耐えられず門を開けて出て来ましたが、コンノンバン(居間と向かい合っている部屋)の方へ行って母親を起こし、

「まぁ、お母さん、よくもこんなにぐっすり眠れるものだわ」

 春香が母を眠りから起こし、
「お前、何が欲しくて起こすんだね?」
「誰が何をくれと言った?」
「それじゃどうして起こすの?」
ときかれて春香がとっさに言った言葉は、
「道令様が房子に案内されて来られたんですよ」

 春香の母親は、門を開けて房子を呼んで尋ねるには、
「誰が来たのかね?」

 房子が答えて、
「使道の令息、道令様が来られましたよ」

 春香の母はその言葉を聞くやいなや、叫びました。
「香丹(ヒャンダン)!」
「はい!」
「後の草堂に座席と灯りを用意し敷物を敷きなさい」

 と頼んで春香の母が出て来きました。世間の人達はみな春香の母を褒めたたえていましたがやはりそれには理由がありました。昔から人は容貌や性質が母方に似るとよく言いますが、その通り春香のような娘を生んだのだなぁと思いました。春香の母が出て来てその振る舞いを見てみると五十を越えているのに気さくな様子で、思いやりのある優しい動作はひょうひょうとして穏やかで、肌はつやつやして、幸せに恵まれているように見えました。おおような歩き方で歩いて出て来て、黙っておとなしく房子が後について行くのでした。

 

 この時、道令様がゆっくりぶらつき振り返って見たり横目で見たりして退屈で、恥ずかしそうに立っていると、房子が申し上げました。

「こちらが春香の母親でございます」

 春香の母が進み出て両手をあわせておじぎをし、すっくと立ったまま、
「道令様は御機嫌はいかがでしたか?」

 道令様は微笑んで、
「春香のお母さんこそ…。元気ですか?」
「はい何とか過ごしています。いらっしゃるのを全く知りませんでお迎えが行き届きませんでした」
「どういたしまして」

 春香の母が先に立って案内して表門を過ぎ、家の後ろにある庭を回って行き、古びた別草堂(べっそうどう)につきました。灯燭(とうしょく)を明るく照らし、柳の枝が垂れ下がって灯火を遮る様子がまるで玉の簾(すだれ)が鉤(かぎ)に掛かったようで、右の方の碧梧桐(へきごとう)は白露がぽたりぽたりと落ち、鶴に夢を見続けさせ、左に立っている盤松(背が低くて横に広がった松)は、清風がさっと吹けば老いた龍がくねくねと動くように、窓の前に植えた芭蕉、日暖初鳳尾長(芭蕉の若葉が鳳の尾に似ていること)は若葉が長く伸び、水心如珠(池の中にある珍しい玉)の若い蓮の花は水面に辛うじて浮かび、玉露に光が斜めに射し、平鉢のような金魚が魚に変わり、龍になろうとして時々波を打ち、どぶんどぶんと動き回って、鈴なりに群がり、新しく出た蓮の葉は手のひらで受けとるように開き、級然上峰石仮山(庭の周りを高く突き出た山で、庭に積んでおいた三つの峰の石)はぎっしりと積まれていて、癸亥(みずのとい)の鶴が人を見て驚き、二つの翼の付け根を広げ、長い脚で大股に歩きキルクトルクと鳴き、葵の花の下でむく毛の犬が吠えていました。

 その中で嬉しいことには、池の中につがいの鴨はお客様が来るのをふわりと空に浮かんで待っているような様子でした。軒先に到着すると、その時やっと春香が母親のいいつけ通りに紗窓(絹を貼った窓)を半ばまで開けて出て来ましたが、その様子を見てみれば、くっきりとした一輪の明るい月が雲の外に突き出たような姿で、うっとりとしてしまうその姿は想像するのも難しいのです。恥じらいながらお堂の方に降り、さり気なく立っている様子は人の心を溶かしてしまうようでした。

 道令様は微笑んで春香に尋ねました。
「元気に、食事はおいしく食べているかね?」

 春香は恥ずかしくて答えることが出来ず、黙って立っているので、春香の母がまずお堂に上がって道令様を座席に御案内した後で、お茶を入れてお勧めし、煙草に火を付けて差し上げると道令様は受け取って、くわえて座りました。道令様が春香の家に来られる時に、春香に下心があっておいでになったのであって、春香の調度品や、器を見物に来たのではないのです。さらに道令様の初めての外泊なので、家に入る前には何か話したいような雰囲気でしたが、入って行って座ってみれば別に何を言うわけでもなく、なんとなくいたずらに咳が出て、悪寒を覚え、いくら考えてみても話題を思いつくことはなく、恥ずかしくて落ち着くこともありませんでした。それに緊張して恐縮してしまいました。

 部屋の真ん中を見回し、壁の上の方を見ると高価な器が置いてあるのです。龍の模様を彫り込んだタンスと鳳凰の模様を刻んだタンス、かけすずり(筆でものを書くための四角い道具入れ箱、前の方に二枚の扉があり、中に多くの引き出しがあるもの)が、あちこち開けてあり、絵を描いて貼り付けてあるが、夫のいない春香であるし、学問をする女の子にこれらの調度品と絵が似合わないのですが、春香の母が有名な妓生(キーセン:高級芸能人。)でその娘に与えようと用意したものでした。朝鮮の有名な名筆の字が貼ってあり、その間に貼られた名画のすべてはさておいて、月仙図(ウォルソンド)という絵が貼ってあったのですが、月仙図の画題は次のようでした。

 王様が高く座り、近臣の朝礼を受ける絵(上帝高絳降朝節)、青年居士李太白が黄鶴展にひざまずき、黄庭経を読む絵、白玉楼を建てた後で自分を歌いあげ、上梁文を作る絵、七月七日の夕方、天の川の烏鵲橋(オジャッギョ)で織姫彦星が逢う絵、広寒殿の月の明るい夜、薬をついてつくっているこうがの絵など何層にも重なって貼ってありました。それらはさんらんとして光り輝き、心が落ち着きませんでした。もう一か所をよく見てみると、富春山(プチョンサン)の巌子陵(オムジャルン:光武帝と留学した仲の人)が諌議大夫(かんぎたいふ)を拒み、白鴎(かもめ)を友とし、猿や鶴を隣人として、羊の毛皮をさっそうと着て、秋洞江七里灘に釣糸を投げている景色がありありと描いてありました。いわゆるこれが神仙へ昇ることのできるよい時期であるのです。男子が付き合う相手としての良き伴侶と楽しく過ごす所が正にここなのです。

 春香が、一途に一人の夫だけに仕えようと詩を一首作って机の上に貼っておいたのでした。

風情を帯びた春風の竹
お香を立てて夜に本を読んでくださいね

※情緒溢れる気高い女性春香(風情を帯びた春風)があちこちに行くわけでなく、竹のようにまっすぐで一途な気持ちであなた(道令様)のところに今いきます。離れていても、本を読んで勉強をしている時でも、いつもお香(=春香の香)を焚いて、忘れずに思い出してくださいね。

「殊勝なことだ。この詩の意味は木蘭の礼儀と気概であるな」
 このように賞めたたえていると、春香の母が言いました。
「尊い道令様よ、ささやかな家に来て頂き、恐れ多いことと感激しております」

(つづく)

 

次は 「ラブストーリー春香伝(4)」

< 前のページへ

 

 

次は 「ラブストーリー春香伝(6)」

次のページへ >


 
ページの一番上へ
Copyright © Daikouji. All Rights Reserved.
大光寺