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●ラブストーリー春香伝 (2009.8.19) 

(12)新官の悪刑

 使道(サド)はこのように褒め称えるのでした。
「美しい上にさらに美しい女だ。お前が本当の烈女(節操を固く守る女性)というものだ。お前の貞節、固い決意を聞いてますます可愛く思えてくる。お前の言うのはもっともな話。しかし李秀才(未婚男子の敬称で李道令イドリョンのこと)は、漢陽(ハニャン:いまのソウル)の士大夫(サデブ)の子弟として名門貴族の婿となった。お前とは一時的な愛であって、ちょっとの間戯れにもてあそんで、軽くあしらっているとは思えないのか? お前はもともと節行(節度ある行動)があり、一生ひたすら貞節のみを守り、きれいな顔が年老いて白髪が垂れ下がれば、歳月が流れる水のようで、その無情を嘆くようになるのだから。それは哀れで可哀相とは思わないのか。いくら守節してもお前を烈女として表彰してくれる人間がどこにいるのだ? そんなものは全部捨ててしまってお前の府の官長(地方官)と結ばれるのが正しいことではないか、さもなければ餓鬼と結ばれるのが正しいか? お前はどう思うのか言ってみろ」 

 春香が申し上げるに、
「忠臣は二君に仕えず、烈女は二夫に仕えず節概を守る、という言葉を手本にしたいと思いますので何度かいただいた仰せに従うくらいなら生きているより死んだ方がましです。貞節のある女子は二夫に仕えることは出来ませんから、何なりと処分してくださいませ」

 この時、会計のナリがさっと進み出て言うには、
「いいかお前! お前は軽はずみなことを言う女だな。かげろうのような人生の一生を小さな世界の美人で終わってしまうのだぞ。何度も辞退するのはどういうことだ? 使道様がお前を敬っておっしゃるお言葉なのに、お前のような娼妓(しょうぎ)の輩に守節が何だ。貞節が何なのだ。旧官(前の使道)を見送り新官を迎えることは法典の上でも当たり前のことであり、道理にもかなったものなのにけしからんことを言うな! お前のような賎しい妓生(キーセン)の輩に忠烈(きわめて忠義心の厚いこと)の二字がどこにあるんだ?」

 この時、春香は呆れてしまって、さり気なく座って申し上げました。
「忠孝烈女(忠義心・孝行心をもって守る女性)に上も下もあるでしょうか? しっかりとお聞き下さい。妓生の事で申し上げます。忠孝烈女はないとおっしゃいますので、一つ一つ申し上げます。海西(ヘソ:黄海道)の妓生、弄仙(ノンソン)は洞仙嶺(トンソンリョン)で死んでおり、宣川(ソンチョン)の妓生は子供とはいえ七去の学問(七去の悪を悟った学問。小学)を持っており、晋州(チンジュ)の妓生、論介(ノンゲ)は我が国の忠烈として忠烈門に祀られていて永く祭祀を行っており、清州(チョンジュ)の妓生、花月(ファウォル)は参層閣に上がっており、平壌の妓生、月仙(ウォルソン)も忠烈門に入っており、安東(アンドン)の妓生、一枝紅(イルチホン)は生烈女門を建てた後で貞敬加資(チョンギョンカジャ:通政大夫以上のレベルにあがった夫人)となったので、あまり妓生を無視しないで下さいませ」

 春香が、再び使道の前で申し上げるには、
「当初、李秀才と出会った時に高くそびえ立つ山と西の大きな海に固く誓ったので、私の一心貞節を孟賁(メンブン:古代の勇士)のような勇猛さでも奪うことは出来ません。蘇秦(ソジン:戦国時代の策士)と張儀(ジャンウィ:戦国時代の遊説家)のような弁才があらわれたとしても私の心を変えることは出来ず、諸葛孔明先生の高い才能は東南の風を利用しましたが、一片丹心(一途な心)をもつ女の心を屈服させることは出来ません。箕山(キサン)の許由(ホユ:高士)は尭(ヨウ)の王様からの讓位を受けとらなかったし、西山の伯叔(ペクスク:兄弟)の両人は周の国の米を食べようとしませんでしたが、もし、許由がいなかったら俗世間から離れて隠居する士と誰が言い、もし、伯夷(ペクイ)叔齊(スクチェ)がいなかったら、不義をはたらく乱れた輩が多いはずです。私の身分がたとえ賎しいといえども、許由と伯夷叔齊を知らないはずはありません。人の妾となり、夫を裏切り、一家を捨てることは、官吏である官長様が君主を裏切ることと同じですので、何なりと処分して下さい」

 使道は大いに怒って、
「この女、よく聞け。謀反大逆の罪は陵遲処斬(ヌンジチョチャム:殺した後に頭、胴体、手、足を切断する極刑)に処し、官長を嘲弄する罪は棄市律(罪人の屍体をさらす中国の刑罰)に処すると書いてある、官長に逆らった罪は厳刑に処し、定配(島流しにすること)に処す。死ぬことになっても悲しむなよ」

 春香は、あらん限りの声を張り上げ、
「夫のある女を脅迫して奪うことが、罪でなくて何でありましょう?」
使道はあっけにとられ、悔しさの余り、小さい机を叩く時、宕巾(タンゴン:帽子の下に着ける冠のひとつ)が脱げ、まげがばさりと落ち、声をからすほどの大きさで、
「この女を捕らえて、連れて行け!」
と命令したのです。小部屋にお付きの通引(トンイン)が、
「はぃ〜〜〜」といって飛び掛かって、春香の長くのばした髪をぐっと引っ張り、
「及唱(クッチャン:地方官庁に属した下僕)!」
「はぃ〜〜〜」
「この女を捕らえて連れて行け!」
春香がはらいのけて、
「放してっ!」

 中階(家屋の基礎となるように積んだちょっと高い壇)まで走り降りていったのですが、あわや及唱が飛び掛かってきて、
「こいつめ! どのお方の前と心得て、そんな答え方をしているのだ。生きて帰れるとでも思っているのか?」

 テトゥル(石畳の上の母屋に沿った庭)の下に引きずり下ろされると、猛虎のような軍奴(グンノ:ボディーガード)や使令(サリョン:家来)達が蜂の群れのように飛びかかってきて、甘苔(海苔の一種)のような春香の長い髪を、幼い子が凧糸を繰るように、または船頭が錨に綱を巻くように、または四月八日の燈台(燈篭をつり下げるための棒)の紐を繰るようにくるくる巻いて強くゆさぶり、引き倒したのでした。哀れな春香の身の上、白玉のようだった美しい体がユッヂャペギ(南部地方で歌われる歌)で歌うように、前にのめってしまったのです。左右に羅卒(ナチョル)が立ち、夜警の巡回時に用いる杖や罪人の尻を叩く平たい棍棒、刑具に使う朱塗りの棒を手に持って、
「申し上げろ! 刑吏(刑房に属した役人)を待命するんだ!」
「はぃ〜〜〜。頭を下げろ。刑吏です!」

 使道はあまりにも怒りがこみ上げてきて、ぶるぶると震え、息も絶え絶えに ‘はあはあ’といいながら、
「いいか! あの女には何の念書も要らない。何も聞かずヒョントゥル(罪人を尋問するとき使われる刑具)を使って縛り上げ、頭を潰し、物故状(罪人を殺したことを報告する文)に載せておけ」

 春香をヒョントゥルに上がらせて縛った獄長のとった行動みてみると、
  刑棒や笞棒や棍棒やら一抱えをどっさり抱え、それらをヒョントゥルの下にがらがらと投げ出す音に、春香の心は乱れるのです。棍棒による刑を執行する使令の動きをみてみると、この棒を取ってびゅんびゅん、あの棒を取ってびゅんびゅん、肉付きがよくごつごつして、よく利く棒を選び取り、右の肩を脱いでかつぎ、刑棒を握って、庁令がくだるのを待つのです。
「命令を聞け。その女に情をかけて、わざと空振りしたら直ちに首を切るぞ。うんとひどく叩け」

 刑を執行する使令が申し上げるには、
「使道様の仰せがまことに厳しいので、あんな女に何も情などはかけません。この女め、脚を動かすな! 万一、搖れ動いたりすれば、骨が折れるぞ!」
と怒鳴り、面と向かい、検杖(コムチャン:刑具の一つ)の音とともに足に揃えながらそっと春香に言うのです。
「一、二回だけ我慢なさい。どうすることも出来ません。この脚はこちらにそらせ、そちらの脚はそちらにそらせなさい」
「しっかり叩け」
「はいっ!叩きます」

 がっと当たると同時に折れた刑棒の切れ端はばらばらと飛び、空中にびゅんと飛び上がり、上房のテトゥルの下に落ちるほどでした。春香は何とかこの痛さに堪えようと歯をぎりぎりときしらせ,首だけぐぐっと揺らしながら、
「あぁ、なんということ!」
と叫ぶのでした。

 棍棒、笞棒で叩く時は、使令が立って、一、二、と数えるだけなのですが刑棒からは法刑なので、刑吏と通引が闘鶏をするように向かい合って腹這いになり、一つ叩けば一つ線を引き、二つ叩けば二つ線を引き、無学でお金のない奴が酒場の壁に酒代を線で引くように引いていくのですが、一番目の一の字が引かれたのでした。春香はひとりでに悲しさが溢れ、泣いてしまうのですが、
「一片丹心、堅固な心はひとりの夫に従うことという意味ですから、それくらいの鞭で叩かれたところで、一年も過ぎていないうちに、私の心がちょっとでも変わるものですか?」

 

 この時、南原府の閑良(ハンリャン:遊興をよくする人)が老若男女の区別なくみんな集まってきて見物していたのですが、左右の閑良達は、
「ひどい、ひどすぎる! うちの府の府使様は残酷だ。あんな刑罰はありえない。あんな鞭打ちは見たことがない。執行する使令をよく覚えておけ。参門(官庁の正門、東西の脇の門)の外から出て来たら殺してしまえ」

 これを見たり聞いたりした人々はみな涙を流しました。二回目の鞭を打ったのですが、
「二妃節を知っていますので二人の夫に仕えない私の心はこの鞭を受けて死んでしまっても、李道令を忘れません」

 三回目の鞭を打ったのですが、
「三従の礼(父、夫、子に従うこと)、大事な法である三綱五倫(儒教の道徳)を知っていますので、三回の刑罰を受けて、島流しになるとしても、三清洞におられる私の夫、李道令を忘れはしません」

 四回目の鞭が打たれたのですが、
「士大夫使道様は、四民公事(「士、農、工、商」の身分の民、即ち全民に対する公事)に目を配ることなく官庁の仕事を権威的に見せることにのみ力を注ぎ四十八坊の南原民の恨みを御存じでありません。四肢を裂かれても死ぬか生きるかさまよっても、私の夫を死生の間で忘れることはありません」

 五回目の鞭を打ったのですが、
「五倫倫紀(倫理と綱紀)は途切れることなく、夫婦有別(五倫のひとつで夫と妻の間の道理はお互いに侵さないこと)、五行により結んだ縁を今ずたずたに引き裂かれてしまったとしても、寝ても覚めても忘れない私の夫を完全に思い出すのです。梧桐の秋夜に出る明るい月によって主のおられる所が見えるものを、今日でも手紙が来るか、明日にでも知らせが来るだろうか。無罪のこの私が悪死する道理はないのですから、誤った罪への罰はお止め下さい。あぁあぁ、私の身の上よ!」

 そして六回目の鞭を打ったのですが、
「六六は三十六計で、くまなく調べて六万回殺しても、六千節にみなぎる心が変わることは全くありません」

 七回目の鞭を打つのですが、
「七去の悪を犯しましたか? 七去の悪でもないのに七つも刑罰を受けるとはどういうわけですか? 七尺の剣の切れる刀でずたずたに切っていますぐ早く殺して下さい。叩いている刑房の者よ、打つごとに情をかけずに叩きなさい。七宝紅顔(美しい顔)の私は死ぬのです」

 八回目の鞭を打つのですが、
「八字(一生の運)の好い春香の体は、八道の方伯(パンベク)、守令中にいるもっとも有名な明官と出会ったものですね。八道の方伯、守令の皆様方は、民を治めるために降りてこられたのでしょう。悪刑をしようと降りて来られたのですか?」

 九回目の鞭を打つのですが、
「九曲肝腸の非常につらく悲しい心で、この私の涙が九年も続く大洪水となるのでしょうね。九皐(奥深い静かな)青山の長松をどけて、チョンガン船か何かに乗って、漢陽城の中に急いで行き、九重の天の王様に、くわしくこの罪のない事情を申し上げ、九つの庭へ退出し、三清洞を訪ねて行って嬉しく会い、切ない私達の愛、しこりの残った心を精一杯解きほぐすものを」

 十回目の鞭を打ったのですが、
「十生に九死を得ても、八十年決めた意志を十万回殺しても変わる見込みはないのです。十六才の幼い春香は、棍棒で打たれて悔しく怨めしい鬼神と変るでしょうが、それは哀れな上にも哀れです」

 十回行って止めると思ったのですが、十五回目の鞭を打ったときには
「十五夜の明るい月が、雲の群れに隠されており、漢陽におられる私の夫は、三清洞に隠されています。月よ、月よ! 主は見えないか?主のおられる所を私はどうして見られないのか」

 二十回打って終わるのかと思っても、二十五回目の鞭を打ったときに、
「二十五弦、タニャンの月に、不勝清怨(清い恨みに勝つことができない)のあのガンよ、お前の行く所はどこの山なのか。行く途中で漢陽城を訪ね、三清洞にいる主に、私の言葉を何とぞ伝えておくれ。私の様子をちゃんと見て、何とぞ何とぞ、忘れてくれるな」

 

(つづく)

僧舞(スンム)

尼僧の踊りで、袖が長いのは天国の羽衣を表している。太鼓は大願成就の祈り

 

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