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●ラブストーリー春香伝 (2009.8.23) 

(16)春香の血書、御史の南原到着

 御史殿(オサ:道令のこと)は話のやりとりを終えると、背を向けて、
「はっはっ! 恥をさらしてしまったようだ。さてお百姓、頑張って下さい」
「はい」

 お百姓と別れて、次の曲がり角を曲がると、一人の少年がやって来ました。竹の棒を引きずりながら、時調(朝鮮固有の定型詩)を半分混ぜて言うのです。

 「今日は 何日なのか
  千里の道 漢陽(ハニャン:ソウルのこと)
  何日かけて 上って行くのか
  趙子龍(チョジャリョン:三国時代蜀漢の武将)が 川を越えるときに乗った
  青蹄馬(チョンチョンマ:青味を帯びた馬)が いたならば
  今日中に 着けるのに
  可哀相だ 春香は
  李の旦那を 想って
  獄中に 監禁されて
  命がどうなるか分からず 可哀相だ
  悪い両班だ 李の旦那は
  一度行っては 消息も絶えて
  両班の道理とはそんなものか」

 御史殿が、この言葉を聞いて、
「坊や、どこの子だ?」
「南原(ナモン)に住んでいます」
「どこに行くんだ?」
「漢陽に行きます」
「何の用で行くんだ?」
「春香の手紙を持って、旧官のお宅に行きます」
「坊や、その手紙をちょっと見せてみろ」
「この両班は、物を知らない両班だね」
「どうして?」
「では、お聞きなさい。他人の手紙を見ることもふつう難しいのに、まして他人の内簡(親しい者同士やりとりする手紙)を見せろというのですか?」
「坊や、よく聞けよ。‘旅に出る人が、去る前にもう一度開封する’という言葉があるんだよ。ちょっと見ても差し支えがあるのかね?」
「この両班は、みすぼらしい格好をして凶悪に見えるけど文章の道理については立派に知っているじゃないか。ちょっと見てから返して下さいね」

「無礼な奴だなあ」
と言いながら手紙を受け取り、封を切って見ると、そこに書かれている内容は、このようでした。

「一度お別れした後、音信が途絶えましたが、道令様には御両親にお仕えの上、ご安泰にお過ごしのことと切に願い、敬いお慕い申上げます。卑しい妾の春香は小さなことから官から全ての決断が下され、命(めい)旦夕(たんせき)に迫り、今にも死ぬ状態でおります。死の境地に参りますので、魂は黄陵の廟に残り、鬼関(黄泉の国に入る門)へ出没します。私がたとえ一万回死んだとしても、それでも烈女は二夫に仕えず、私の死生と老母の行く末がどんな惨めな境遇になるか分かりませんので旦那様は深く御了解の上お取り計らい下さいませ」

手紙の終わりに書かれているのは、

  去年のいつ 主は別れて行ったのか
  数日前冬の雪が降ったのに また秋が来ている
  狂った風の吹く深い夜に 涙が雨のように落ちるのです
  なんのために 南原の獄中の囚人になっているのでしょう

 血書でしたためてあり、砂原の上に降り立ったガンのように、ひたすらぶさりと心を突き刺されるのはすべて哀しみと苦しみだったのです。御史は手紙を見て、両眼に涙がにじみ、流れ出し、しずくとなって次々と落ちるのです。少年は驚いて、
「他人の手紙を見て、どうして泣いているのですか?」
「ええい、この子供! 他人の手紙でも悲しい内容を見れば自然に涙が出るんだよ」

「ねぇ! 人情があるのはいいとしても、他人の手紙に涙を落としたらどうなると思っていますか。その手紙一枚の値段は十五両もするんですよ。手紙の値段を弁償して下さい」
「いいかね、李道令(イドリョン)は私の幼なじみで、故郷に帰ってする仕事があって、私と一緒に都から降りて来る途中、全州に立ち寄り、明日、南原で会おうと約束したのだ。私について来て,後でその両班に会いなさい」

その少年は顔色を変えて、
「漢陽をすぐ近くだと思っているのですか?そんな嘘ついて騙されませんよ。」と言って、飛び掛かって、
「手紙を返して下さい」と言って強情を張るのですが、御史が懐に入れていた丸いもの(馬牌:王様から潜伏調査を任命された証明書のようなもの)を持っているのに触ったので、びっくりして、後ろに下がって、
「こ、これは、どこから手に入れたのですか? こんなおそろしい」
「こいつめ! 万一機密を漏らしたら命はないぞ」

 

 そう言い付けて、南原に入って行きました。博石峙(パクソクチ:峠の名)に立って四方を見回してみると、山も昔見た山で、川も昔見た川でした。南門の外にさっさと出て、
「広寒楼は変わりはなかったか、烏鵲橋(オジャッキョ)は大丈夫か? 客舍の前の青い糸柳は、ロバをつないで遊んだ場所で、青雲落水、澄んだ水は、私が足を洗った清溪の川だ。緑水秦景、広い道は行き来した昔のままの道だな」

  烏鵲橋(オジャッキョ)の橋の下で洗濯している女人達の中に娘達が混じって座っていました。
「ねえねえ」
「どうしたの?」
「いやー、本当に可哀相。春香が可哀相だよ。志操の高い春香を力ずくで奪おうとしても、鉄石のような春香の心は死ぬことを恐れるものか。冷たくてひどいですよ! 李道令は冷たい人」

 自分達だけで議論になり、ぺちゃくちゃと話しながら洗濯する様子は、英陽(ヨンヤン)姫、蘭陽(ナニャン)姫、秦彩鳳(チンチェボン)、桂繊月(ケソムウォル)、白凌波(ペクロンパ)、狄驚鴻(チョクギョンホン)、シミョヨン、覃春雲(カチュニュン)とも似ているが、楊小游(ヤンソユ)がいないのは、誰かを訪ねて座りこんでいたからだろう。御史殿が楼閣へ上りよくよく見渡してみると、西の方ではねぐらに帰る鳥が林の方に行くのです。その向こう側の柳に、春香がぶらんこを結んで、行ったり来たり遊んだ様子を、まるで昨日見たかのように懐かしく思うのです。東の方を見てみると、長林の深い所と緑林の間、春香の家があそこに見えるのでした。あの中にある内東園はずっと昔に見た面影のままで、石壁の険しい監獄は,春香が泣いている所かと思うと、可哀相な上にも可哀相でしかたがないのです。太陽が西の山に沈み黄昏が迫る時、春香の家の門の前に到着したのです。

 表門の脇にある部屋は崩れ、家の母屋は細枝が取り除かれ、昔見た碧梧桐は林の中にぽつんと風に耐えられずにみすぼらしく立っているのです。低い塀の下には白い鶴がやたらに歩き回っているのですが、犬に噛まれたのかのように羽も抜け落ち、脚もぞっとするほどむごたらしく‘チルルク トゥルルク’と鳴いて、門の掛け金具の前の黄色い犬が、元気なく居眠りしているのです。犬は昔なじみの客を見忘れて、「わんわん」と吠えて走り寄って来るのです。
「この犬! 吠えるな。主人のようなお客だぞ。お前の主人はどこに行っている?お前は私を見て喜ばないのか?」

 中門を眺めると、道令の手で書かれた文字があったのですが、忠誠の忠の字が「中」の字がどこかに行って「心」の字だけが残り、臥龍壮字(ワリョンチャンジャ:龍のように壮大な字)のある立春書は東南風にひらひらとたなびき、この道令の心配をあおるのです。知らず知らずに中へ入って見ると、中庭はひっそりとして寂しい感じなのです。春香の母の姿をみてみると、お粥の釜に火をつけて、このようにいうのです。

「あぁあぁこの事情! ひどい、ひどすぎる! 李旦那はひどい人だ。危険な目にあっている娘をすっかり忘れて、消息さえ途絶えてしまって。あぁなんて悲しいのだろう。香丹(ヒャンダン)! ここへ来て、火を入れなさい」
と言い付けながら、出て来たのです。垣根の中の小川の水で白髪を洗ってすいて、井華水(トンファス:早朝に一番初めに汲んだ井戸水で真心をこめて祈る時使う水)を水がめに一杯、壇の下に供えておいて地面にひれ伏して祈ることには、

「天と地の鬼神よ! お日様、お月様、お星様は姿を変えて,一つの心になり給え。ただ、我が娘春香を金のかけらのように育て上げ、外孫奉祀(母の実家に後継ぎがないために外孫が変わりに祭祀をすること)を願ったのに無実の鞭の罰を受け、獄中に監禁されていて生かせる道がございません。天と地の神様、守護霊、背後霊は感動を賜わり、漢陽城(ハニャンじょう)の李夢龍(イモンリョン:李道令のこと)を青雲に高く昇らせ、我が娘春香を救い出して下さいませ」

 

 お祈りを終えた後で、
「香丹(ヒャンダン)! 煙草を一服するから、火をつけてちょうだい」
春香の母が受け取ってくわえ‘ふう〜’と溜め息をつき涙を浮かべていると、この時、御史(オサ)が春香の母の真心を見て、
「私が官位に上がったのは、御先祖様の隠れた得行によるものと思い込んでいたが私の義母による徳によるものだったのか」とつぶやき、こう言いました。
「家の中に誰かいますか?」
「どなたですか?」
「私だよ」
「私とは誰のことですか?」
御史が入って行って、
「李旦那だよ」
「李旦那だって? ああ李風憲(イプンホン:村の仕事を引き受ける役)の息子の李旦那かね?」

「はっはっ! お母さん、もうろくしたね。私が分からない? 私のことが分かりませんか?」
「あんたは誰なのさ?」
「婿は百年の客というのにどうして私が分からないの?」
春香の母はそれを聞いて喜んで、
「いや、これはどうしたこと? どこへ行って来たんだい。風が強く吹いたから、風の間に間に漂って来たのかね。山のうしろから雲が湧いて出てきたようだったので、雲の中に包まれて来たのかね。春香の消息を聞いて助けようと来て下さったのか。さあさあ、中に入りましょう」
と言って、道令の手を取って中に入り、ろうそくの前に座らせておき、くわしく眺めてみると、乞食の中の一番の乞食になった姿なのでした。

 春香の母は呆れて、
「これはどういうことですか?」
「両班にしくじってしまい、言葉では言い表せないよ。あの時、上京して、官職への道は断ち切られ、家財を使い果たし、父上は寺小屋の先生となって去られ、母上は実家に戻られ、皆それぞれ分かれてしまい、私も春香の所に降りて来て、幾分かの金でも貰って行こうかと思ったが来てみると、両家のこの経歴は話にならないね」
春香の母は、この言葉を聞いて呆れて、
「冷たい人だ! 一度別かれた後で消息がなかったのに、そんな挨拶がどこにある。出世か何かを望んでいたが、物事がうまく行くとはこういうものかい。射ってしまった矢のようなもの。覆水盆に返らず、誰を恨み、誰を責めることもできないが我が娘春香を一体どうしようというのかい?」
と言って母は腹立ちまぎれに飛び付いて、鼻を食いちぎろうとするのです。
「悪いのは私のせいで、鼻のせいではないでしょう。お母さんが私を見忘れてしまい、天が無頓着だとしても、風雲の予測しがたい変化と晴天の霹靂(へきれき)というではないですか」

春香の母は気が塞がってしまい、
「両班に失敗したから、あくどい嘲弄まで聞こえてきたわけだね」
御史がわざと、春香の母の振る舞いを見ようと、
「腹が滅って死にそうです。私に御飯をちょっとだけ下さい」
春香の母は、飯をくれという言葉を聞いて、
「御飯はないよ」
飯がないことはないのですが、腹立ちまぎれに言い放った言葉でした。

 この時、香丹が獄に行って帰って来たところでした。自分の奥様の騒がしい声に、胸がどきどき、びくびくして、どこからともなくそっと入って来て、静かに見回してみると、なんと前の旦那様が来ていらっしゃるのです。どんなに懐かしかったのでしょうか、突然どかどかと走って入ってきて、
「香丹でございます。長官様(道令の父)のご機嫌はいかがでしょうか。大夫人(道令の母)にはその後お変わりないでしょうか。旦那様も遠い所を、よく御無事でお越しでございました。」
「うん、ごくろうさん」
「私は元気でございます。奥様、奥様、大奥様! おやめ下さい、おやめ下さい。そんなにおっしゃらないで下さい。遠い遠い千里の道を、誰に会おうとしていらっしゃったのか、ご存知ではないですか。こんなに冷たくなされるとは、何ですか。お嬢さんがお知りになれば、前もって叱られますから、そんなに冷たくなさらないで下さいませ」
と言ってそそくさと台所に入って行きましたが、冷や飯に青唐辛子、塩漬けのキムチ、調味料を入れて、甘い醤油に水をたっぷりすくって、お膳に乗せてもって来て、
「熱い御飯を作る間に、おなかが空いているでしょうから、先ずこれでもお召し上がり下さい」
御史殿は喜んで、
「御飯だ! お前の顔を見るのは久し振りだなあ」
といって、いろいろな物を一緒に注いでから、匙(さじ)を使うことなく手でくるくると振ってかきまぜ、一方に寄せて、南風に蟹が目を隠すように、あっという間に平らげてしまうのでした。春香の母が言うには、
「なんだ、御飯を乞食することに慣れているみたいだね」

(つづく)

カヤグム サンジョ(散調)

かやきんという琴をつかった独奏

 

 

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