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●ラブストーリー春香伝 (2009.8.24) 

(17)御史(オサ)との再会

 この時、香丹(ヒャンダン)は自分のお嬢さんの身の上を考えると、思い切り泣くことも出来ず、すすり泣いて言うには、
「どうすればいいのでしょうか? 徳のお高いうちのお嬢さんをどうやってお助けできるでしょうか。どうやって、何をすればならないのでしょうか?」
声も出せずに泣く様子を、御史(オサ:李道令のこと)殿が御覧になって呆れて、
「おいおい香丹! 泣くな、泣くな。お嬢さんはまさか死ぬことはあるまい。行いがこの上なく正しければ、助かる日があるだろう」

 春香(チュニャン)の母がそれを聞いていて、
「なんだい、両班だけあってやせ我慢なんかして。あんたは一体どうしてそんな格好をしているのかい?」
香丹が言うには、
「うちの奥さんの言われる言葉をどうか気にしないで下さい。年を取ってもうろくしてこんなことになってしまったので、腹立ちまぎれに言われた言葉なのです。少しも腹を立てられませんように。熱いお食事をどうぞ召し上がって下さい」

 御史殿はお膳を受け取って、春香の境遇を考えていると、新官の使道に対する悔しい気持ちが高まってきて、心が侘びしくなり、はらわたがむかむかしてくるのです。夕食の味もなく、いきなり
「香丹、お膳を下げろ」と言うのです。
煙草をぽんぽんとはたき、
「ねえお母さん。春香にちょっとでも会いたいと思います」
「そうしなさいよ。旦那様が春香に会わないで、それが人情と言えるのでしょうか?」

 香丹が申し上げて、
「今は門が閉まっているので、罷漏(パル:夜間通行禁止の解除)があれば行きましょう」
 この時ちょうど罷漏の知らせが「かんかん」と打たれたのでした。香丹はお粥の膳を頭に乗せ灯篭を持ち、御史殿は後につい行って、獄門の前に到着しました。人通りがなく静かで、獄長も姿が見えませんでした。この時、春香は夢でもなく、目が覚めているでもないような状態でいました。旦那様がいらっしゃったのですが、頭には金の冠をかぶり、紅衫(ホンキン:赤い上着)を着ていました。主を恋しがる胸で、首を抱き、あらゆることを感慨しているところでした。

「春香!」
呼んでみるものの返事があるはずがありません。御史殿が言うには、
「大きな声で、もう一回呼んでみよう」
「それはいけませんよ。ここと東軒とは向き合っているので大きな声を出すと、使道(サド)が廉問(ヨンムン:密かに事情を問うこと)するので、ちょっと間を置いて下さい」
「何だって? 廉問が何だ。私が呼ぶから静かにしてなさい。春香!」
呼び声にびっくりして目を覚まし、
「はぁ、この声は夢かうつつか。変だな」

 御史殿は呆れて、
「私が来た、と言って下さい」
「来た、と言ったら驚いて気を失うでしょうから黙っていて下さい」
春香は自分の母親の声を聞いてびっくりし、
「お母さん、どうして来られたのですか? 悪い娘を思って天方地軸でむやみやたらに走り回ると転んで怪我をしやすいのですから。この次からは、来ようと思わないで下さい」
「私のことは心配しないでしっかりしなさいよ。来たんだよ!」
「来たって。誰が来たの?」
「ただ来たんだよ」
「息が詰まって死にそうですよ。言って下さい。夢の中で主に会い、あらゆる感慨をしていたのですがひょっとして旦那様の御沙汰が来たの? 官職について降りて来るという路文(官吏が到着する日を予め知らせる文)を通告して来たの? あぁ息が苦しい」
「お前の旦那(ソバン=西方)だか南方だか知らないが、乞食が一人降りて来たよ」
「はぁ、それはどういうことですか。旦那様がいらっしゃったといわれるのですが、夢の中で会った主に生きて会えるということでしょうか」

 

 閉ざされた門の隙間から手を伸ばして、握りあい、言葉にもならず、胸が一杯になり、
「あぁ、これはどなたですか。多分夢なのでしょう。恋しくて会えなかったあなたにこんなにもたやすくお目に掛かることが出来るでしょうか。いま死んでも恨みはありません。

 どうしてこんなにも無情なのでしょうか? 幸せのない私達母子は旦那様と別れた後、眠っても横になっても主を恋しく想い、日が経ち、月が過ぎたのですが私の身の上がこのようになり、鞭で打たれ死にそうになったので私を助けようとしていらっしゃったのですね」

 しばらくこうして喜んでいたのですが、主の身なりを良く見るとどうして嘆かずにいられるでしょうか。
「あの、旦那様! 私ひとりが死ぬことは悲しいとは思わなくとも、旦那様のその境遇はどうしたのでしょうか?」
「うん! 春香よ、悲しむことはない。人の命は天に結ばれているのだから、まさか死ぬことはあるまい」

 春香は母親を呼び、
「七年大旱(大きな干ばつ)、日照りの日に、喉が渇いた百姓達が雨を待つ気持ちも漢陽(ハニャン)城の旦那様を待つ私の気持ちと同じだったのでしょうか。植えた木が折られ、念入りに築いた塔が崩れたのですね。可哀相に。この私の運命。どうしようもないのですね。お母様は、私が死んだ後でも怨まないでください。私が着ていた絹のチャンオッ(女性が外出の時、顔を隠すため頭からかぶった着物)が、鳳箪笥の中に入っているから、その着物を出して売り、韓山のきれいな苧(からむし:麻)と取り替え、きれいに染めて道袍(どうほう)を作り、白色の絹で作った長いチマをほどほどに売って、冠網と履物を買って差し上げ、飾りの付いた天銀(品質の最も良い銀)のかんざしと黄色の琥珀(こはく)で作った粧刀、宝石の指輪が箱の中に入っているからそれも売って、汗衫(ハムサン:手を隠すため両袖に付け足した白い布の長い袖)、袴衣(コウィ:夏パジの代わりに着る一重もの)など、見苦しくないようにして下さい。遠からず死ぬ女が所帯道具を置いて何に使いましょうか。龍箪笥、鳳箪笥、と引き出しをそのまま売って上等なおかずで食事を差し上げて下さい。私が死んだ後にでも、私がいないとおっしゃらずに私と同じように仕えて下さい。

 旦那様、私の話をお聞き下さい。明日は本官(自分の郷里の官長を指す語)使道(サド)の誕生日とのこと、その宴会で酒に酔ってひどい酔っ払いが現れれば私を上がらせて打つでしょうが、刑杖で打たれる箇所に傷の毒が出ているので、手足だって動かせましょうか。伸びて垂らしたままの髪の毛はばらばらになって、長い髪をどうにかこうにかまとめ上げてのせ、こちらによろよろ、あちらによろよろと帰ってくるでしょう。もし鞭で打たれた病で死ぬならば、雇われた軍人の振りをして、とびついて背負い、私達二人が初めて出会って遊んだ芙蓉堂の、冷え冷えする静かな所に寝かせてください。旦那様が手づから死体を清めた後、帷子(かたびら)を着せて、私の魂を慰めて、着ていた衣服を脱かせずに、日当たりの良い土地の端に埋めてください。

 そして旦那様の身分が高くなられ、成功なさったら、一刻もそのままにしておかず、六鎭長布(ユッジンジャンポ:咸鏡北道(ハンギョンポクド)の六鎭のあった所から産する長い麻布)で再び死体を清め経帷子を着せ、こぢんまりした清潔な喪輿(もこし:棺をおさめる小室)の上に高々と乗せた後で、墓地を探す時、前の南山、後の南山はみなやめて、漢陽へ上る途中で、先祖の墓地の麓に埋めて下さい。碑文に刻むのは“守節冤死春香之墓(守節して冤罪で悔しく死んだ春香の墓)”と八字だけ刻んで下さい。望夫石(マンブソク:妻が夫の帰りを待ちあぐんだあげく死んで化したといわれる石)にならないでしょうか。西山に沈む日は、明日再び昇るでしょううが、春香は一度行けば、いつの日にまた戻って来られるでしょう。胸にこびりついた怨みでも解いて下さい。

 あぁあぁ私の人生! 哀れな私の母親は、私を亡くし、家財を使い果たしてしまえば、なすすべもなく乞食となるでしょう。この家あの家と乞食をして、丘の下でこくりこくりと居眠りし、気力が尽きて死ぬことになれば、智異山の黒丸カラスが二つの羽をぱっと広げて、ふわっと飛んで来て、かあかあと二つの目を全部ほじくって食べてもどこかに息子がいたら‘こら〜’と言って追いやるだろうに。はぁ〜!」

 と春香が怨めしく泣いていると、御史様が、
「泣くんじゃない。天が崩れても、噴き出る穴はあるものだ(いくら難しい局面にいても切り抜ける方法はあるもの)。お前は、私のことをどれだけ分かっていて、こんなふうに悲しむのだ?」

 

  そうして御史殿は別れて、春香の家へ帰って来た。春香は、暗くうっとうしい真夜中に、旦那様を稲妻のように一瞬だけ見て、獄房に一人座り、ため息をついて言うには、
「明るい天国は人を生まれ変える時に、特に厚薄の情はないのだけれど、私のこの運命はどんなカルマによるものなのか、16歳の青春に夫と別れ、死に切れない命を生き永らえてこの刑問、この刑杖は何ということだろう。獄中での苦痛は、この3、4か月、夜昼を問わずであった。死んで黄泉に帰るといっても、閻魔大王の前で、どんな話を自慢出来るだろう。あぁあぁ!」

 悲しくて泣けば、疲労困憊して半死半生のようでした。御史殿は、春香の家を出てその日の夜を明かそうと思っていました。そして門の外の事情を密かに探り聞こうとして、秩庁(キルチョン)に行って耳をすますと、吏房(イバン)と承発(スンパル:下級役人の下で仕事をする人)が話をしていました。
「おい、聞けば、刺しゅうをした衣服を着た御史が新門の外の李氏だそうだが、さっき午前2時頃に、灯篭に火をつけて持ち、春香の母を先に立たせ、みすぼらしい身なりの一人の客が多分怪しいので、明日の本官の宴の終わりに行う罰をよくわきまえて、災いのないよう十分に注意しろ」

 御史殿が、その話を聞いて‘あいつらは知ることは知っているんだな’とつぶやき、また杖庁へ行って聞くのです。そのときの行首(ヘンス)軍官の行動を見てみましょう。
「もろもろの軍官諸君! さっき牢獄のあたりに来て帰っていった乞食が本当に怪しい。明らかに御史のようなので、その似顔絵を描いた人相書を出しておいて詳しく見ておきなさい」

 御史殿が聞いて‘あいつら、みんな鬼神のようだな’とつぶやき、県司(ヒョンサ:役所で必要な物を調達する所)へ行って聞けば、戸長もやはり同じようでした。六房をすべて探り回った後、春香の家へ帰って来てその夜を明かしました。

 

(つづく)

コムンゴ サンジョ(散調)

コムンゴという琴は男性がうらみつらみを表現するときに弾くもの。弓で弾く琴のようなものはアジェンとよばれる。

 

 

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